小児麻痺
Polio
小児麻痺とは
「小児麻痺」とは、ポリオウイルス感染を原因とする病気であり、身体の麻痺を引き起こす後遺症を特徴とします。この病気は別名「ポリオ」や「急性灰白髄炎」とも呼ばれます。ポリオウイルス感染症は、小児だけでなく成人にも発症する可能性がありますが、小児麻痺という名前は初期に小児によく見られたためにつけられました。また、「急性灰白髄炎」という名前は、炎症が脊髄の灰白質という部位に見られることに由来します。
一般的に、小児麻痺（ポリオ）は過去の病気と見なされています。実際、世界保健機関（WHO）によってポリオは根絶宣言されていますし、先進国では稀な病気となっています。日本でも1981年以降、新たな感染例は報告されていません（出典1）。
脳性麻痺は永続的な障害であり、生涯にわたって影響を及ぼすことがあります。この病態では、脳の運動制御を担う神経細胞や神経経路に障害が生じます。その結果、姿勢制御、筋力、運動協調性、バランスなどに問題が生じることがあります。
ポリオワクチンの恩恵により、小児麻痺は多くの国で脅威ではなくなりました。しかし、完全に撲滅されたわけではありません。アフリカや南・東アジアなどの地域では、まだポリオウイルス感染が見られます。また、ポリオによる運動麻痺は一生涯にわたって続く障害であり、先進国でも後遺症によって困難を抱える人々が存在します。
出典1：一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会「ポリオ（急性外白髄炎・小児まひ）について」
小児麻痺の原因
小児麻痺（ポリオ）の原因はウイルス感染です。この感染により神経組織が破壊され、それによって運動麻痺が引き起こされます。
感染経路
ポリオウイルスの主な感染経路は経口感染です。つまり、口を介して感染します。ウイルスは喉や腸の粘膜で増殖し、体内循環を通じて全身に広がります。
ポリオウイルス感染では、神経組織の破壊が特に顕著であり、運動を制御する神経がダメージを受けるため、運動麻痺が主な症状として現れます。
ウイルスの残存期間
ポリオウイルスの特徴として、排泄物内でのウイルスの残存期間が重要です。感染者の排泄物にはウイルスが残るため、感染のリスクが存在します。鼻や喉の分泌物には1〜2週間、便には3〜6週間の間、ウイルスが残存するとされています（出典2）。
このため、ポリオウイルス感染の予防には飛沫感染や糞口感染に対する注意が必要です。特に糞口感染は主要な感染経路とされており、排泄物の適切な処理や管理が重要です。予防策としては、ワクチン接種や衛生状態の改善が推奨されています。
出典2：アメリカ疾病予防管理センター「Poliomyelitis」
小児麻痺の（前兆）症状
小児麻痺の症状
ポリオウイルス感染および小児麻痺には、以下のような症状が見られます。
- 発熱
- 悪心・嘔吐
- 頭痛
- 咽頭痛
- 無菌性髄膜炎
- 麻痺
小児麻痺では、感染症状としての前兆症状やその後の神経症状が見られますが、感染後すぐに症状が進行するわけではありません。実際に感染した人の90〜95%は無症状のまま免疫が形成される不顕性感染*1です。
感染症状が発症する割合は報告によると約5%程度です。麻痺症状が現れるケースは少数であり、感染者の0.1〜2%が運動麻痺を経験します。麻痺が起こると、熱が下がった後に筋肉痛や筋肉の痙れん、弛緩性麻痺*2などが現れます。（出典3）
感染から麻痺までの期間は一般的には約30日間ですが、個人差があります。一部のケースでは感染後8〜10日で麻痺が現れることもあります。感染から症状発現までの期間も個人によって異なり、ウイルスの潜伏期間は7〜21日であり、感染日が特定できない場合もあります（出典4）。
*1不顕性感染：病原体が体内に侵入しても症状が見られず、気づかないうちに免疫ができるような感染のこと
*2弛緩性麻痺：「だらりと脱力したような麻痺」のこと。小児麻痺でみられる身体麻痺は、とくに下半身に見られる
出典3：NID 国立感染症研究所「ポリオ（急性灰白髄炎・小児麻痺）とは」
出典4：一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会「ポリオ（急性外白髄炎・小児まひ）について」
小児麻痺の後遺症
後遺症についても理解することが重要です。小児麻痺では、運動障害が残る後遺症となります。筋力の低下や歩行・立ち座りの困難などがその特徴です。重篤な症状の場合、飲み込みや発語、呼吸にも障害が生じることがあります。特に、麻痺による呼吸不全には注意が必要です。ポリオによる死亡例の多くは急性呼吸不全であり、呼吸不全による致死率は小児では約4%、成人では約10%と報告されています（出典5）。
出典5：IDSC 国立感染症研究所「急性灰白髄炎（ポリオ・小児麻痺）」
小児麻痺の検査・診断方法
小児麻痺の検査・診断方法は、主に糞便検査、血液検査、および髄液検査の3つがあります。
01. 糞便検査
02. 血液検査
03. 髄液検査
糞便検査
糞便検査は、感染者の糞便中に含まれるウイルスの有無を調べる検査です。感染が疑われる場合、発症から2週間以内であれば糞便中のウイルスを確認できます。小児麻痺の確定診断においては、糞便検査が重要な役割を果たします（出典6）。
血液検査
血液検査は、血液中のウイルス抗体やウイルス自体を検出することで感染の有無を調べる補助的な検査です。血清（血液の液体成分）を調べることが一般的です。ただし、血液検査ではウイルスの検出が困難な場合もあります。
髄液検査
髄液検査は、脳や脊髄を保護する液体である髄液中の白血球を調べる検査です。感染の有無を確認するために行われます。ただし、髄液検査もウイルスの検出が難しい場合があり、糞便検査が最も有効な方法とされています。
以上のように、小児麻痺の検査・診断には糞便検査が主要であり、血液検査と髄液検査は補助的な役割を果たします。ただし、糞便検査が最も確実な結果をもたらすため、診断にはこの検査が重視されます。
出典6：アメリカ疾病予防管理センター「Diagnostic Methods」
小児麻痺の治療・予防方法
小児麻痺（ポリオ）の治療方法は、特効薬が存在せず、病気そのものを治療するのは難しいため、病院での治療では対症療法が中心となります。熱発には解熱剤、痛みには鎮痛剤を病院で処方するなどの対症療法が行われます。
また、後遺症が残った場合には、病院でのリハビリテーションが重要となります。運動機能の維持と改善を目的としたリハビリテーションプログラムが組まれます。重篤な場合には、呼吸障害や筋力低下が著しい場合には、病院での手術が検討されることもあります。気管切開の手術が病院で行われることで、自発呼吸が困難な状態を改善することができます。
小児麻痺の予防には、治療以上に徹底した予防が重要です。特に海外への渡航予定がある場合は、事前に各地の感染症状況を病院で把握しておくことが重要です。予防策としては、以下のような取り組みが病院で行われます。
01. ポリオワクチンの接種
02. 衛生管理の徹底
03. 感染地域への渡航時の注意
ポリオワクチンの接種
病院で定期的な予防接種スケジュールに従って、ポリオワクチンを接種しましょう。
衛生管理の徹底
病院での衛生指導に従い、手洗いや飲食物の衛生管理など基本的な衛生対策を病院で実施しましょう。特に糞口感染経路に注意し、病院での排泄物の処理や管理を適切に行います。
感染地域への渡航時の注意
感染地域への渡航時には、病院で予防接種の確認や保健所などからの情報収集を行い、病院で感染リスクを最小限に抑えるための対策を取りましょう。
以上のように、小児麻痺の治療は病院での対症療法やリハビリテーションが中心となります。また、予防策の徹底も重要です。
日本国外におけるポリオの最新状況については、下記のサイトでご確認ください。
Polio Global Eradication Initiative
当リハビリセンターにおける
小児麻痺のリハビリ
一般的な小児麻痺のリハビリ
小児麻痺のリハビリテーションは、病院や医療機関、専門のリハビリテーション施設で行われます。幼児期から成人に至るまでの長期的な治療プランが立てられ、専門のチームが関与します。こうした施設では、理学療法士や作業療法士などの専門家が、個別のニーズに合わせたリハビリテーションプログラムを提供します。
リハビリテーション施設では、お子さんの現在の発達レベルや能力を評価し、適切な介入計画を策定します。幼児期では、身体的な動作能力の向上に焦点が当てられ、寝返りや起き上がりなどの基本的な動作の訓練が行われます。作業療法では、食事や自己の世話などの日常生活動作の習得が促されます。
また、心理面も重要な要素となります。リハビリテーション施設では、子供たちが興味を持ち、主体的に関与できるようなアフォーダンス理論を活用したアプローチが取られます。これにより、リハビリテーションが単なる運動だけでなく、楽しく学びや成長の機会となるのです。
成長が進むにつれ、思春期や成人期には、リハビリテーションの内容も変化していきます。特に不良な姿勢や歩行が持続する場合には、病院やリハビリテーション施設で専門家が適切なアドバイスや治療を提供します。これにより、関節や筋肉への負担を軽減し、頚椎症や変形性関節症などの二次障害の発生を予防することができます。
総合的なケアを提供する病院や医療機関、リハビリテーション施設は、小児麻痺の患者やその家族にとって貴重な支援となります。専門知識と経験豊富な専門家の指導のもとで、個々のニーズに合わせたリハビリテーションが行われ、子供たちの発達や生活の質の向上に寄与します。
当リハビリセンターの小児麻痺のリハビリ
当リハビリセンターは、専門知識と他にない機能改善のための機器を兼ね備えたリハビリ施設です。骨・筋肉など発達の過程、身体機能の成長など個人差がありますが、麻痺手の使用方法、歩く姿勢やバランス、そして基礎的な動作等、お客様の改善されたいニーズに応えられるように努めております。施設における主な流れをご説明いたします。
- 電話、またはメールにてお問い合わせ
- 体験リハビリによるカウンセリング、動画撮影、全体の評価及びリハビリ
- 機能改善に向けた問題点や課題の整理
- 目標達成までのリハビリプラン、スケジュールの立案
- ニーズに合わせたリハビリ
- 再評価・目標への達成度確認
- 目標達成・ご卒業
当リハビリセンターは、医療保険で通われる病院、クリニックの外来リハビリなどと併用して利用することができます。
これら医療保険で行うリハビリと当リハビリセンターが行う保険外（自費）によるリハビリの違いとして下記が代表的です。
- お客様のニーズを優先
-
小児麻痺のリハビリは、お子さんの身体能力のみならず、発達、心理、環境、家庭と複雑に絡み合うといわれています。一概に「小児麻痺」という名称でひと括りにできるものではなく、発達の状況や年齢、状態に合わせて「悩み」や「やりたい事」が異なり、私たちはお客様が求めているニーズ・希望に沿ってリハビリのプランとスケジュールを設定致します。
- 専門のセラピストと最新テクノロジーを融合
-
当リハビリセンターでは、最新のテクノロジーを使用したリハビリを行っています。人間本来の身体活動には、お客様ご自身の意思が欠かせませんが、リハビリ専用の装着型サイボーグ（ロボット）により、脳で「イメージした動作」を繰り返し、「実際の動作」とリンクすることによってさらに脳からの電気信号を活発化していきます。
上記専用の機器として、筑波大学が開発したロボットスーツ HAL®（Hybrid Assistive Limb®）を導入しています。様々な活用方法があり、どのような状態においてもまずは試していただくことがお勧めです。
ロボットによる動作を新しく学習することにより、実際に小児麻痺など脳・神経に関する疾患を患った方に対して、歩行の獲得などADL（日常生活活動）に変化が見られた実績があります。
このようにセラピストの専門的な知識と経験、テクノロジーによるお客様の秘めている能力を引き出す事でより豊かな生活を目指します。
最後に
このように理学療法士（PT）や作業療法士（OT）のリハビリ専門の資格を持つセラピストと国際的に実績が豊富なロボットを組み合わせたリハビリが行える施設は日本ではまだまだ不足しています。大阪府では数えるだけしかなく、関西全域でみればこのような環境がない県もあります。
「もっとリハビリをして●●●がしたい！」等、これまで諦めてしまっていることに対しても希望を持っていただきたいと思います。
些細な事でも大丈夫です。小児麻痺で困っている事がありましたら是非一度当リハビリセンターへお越しください。
いつでもお待ちしております。