脳性麻痺
Cerebral Palsy
脳性麻痺とは
「脳性麻痺」とは、神経発達障害の一つであり、脳の発達や運動制御に障害がある状態を指します。この疾患は通常、出生前や出生直後に脳に損傷が起こることによって引き起こされます。しかし、「出生前」と言っても、遺伝的な病気というわけではなく、一般的には、出産前後の胎児期の異変や出産のトラブルによって脳が損傷されるものと考えられています。
1968年、厚生労働省脳性麻痺研究班では、下記のように定義されています(出典1)。
「受胎から生後 4 週間以内の新生児までの間に生じた、脳の非進行性病変に基ずく、永続的な、しかし変化しうる運動および姿勢の異常です。その症状は満 2 歳までに発現します。進行性疾患や一過性運動障害、又は将来正常化するであろうと思われる運動発達遅延は除外します。」
脳性麻痺は永続的な障害であり、生涯にわたって影響を及ぼすことがあります。この病態では、脳の運動制御を担う神経細胞や神経経路に障害が生じます。その結果、姿勢制御、筋力、運動協調性、バランスなどに問題が生じることがあります。
出典1:厚生労働省「医療-障害のある子どもの成長と発達の特徴」p36
脳性麻痺の原因
脳性麻痺の原因となるのは、脳の損傷です。出生前には、胎児の脳の発達障害や奇形、脳損傷などが原因となることがあります。出生時には、早産、低体重、出生時窒息、産道難産などが関与することがあります。また、幼児期初期には、感染症や外傷、脳出血などが脳損傷を引き起こすことがあります。
脳性麻痺の原因として、厚生労働省の資料では以下の項目が挙げられています(出典2)。
- 脳形成不全
- 胎児感染症
- 胎児期の循環障害
- 脳血行障害
- 虚血性低酸素性脳症
- 脳炎
- 脳症
- 新生児期呼吸循環障害
- 高ビリルビン血症 (核黄疸)
- 周産期~乳幼児期感染症
- 頭部外傷
出典2:厚生労働省「医療-障害のある子どもの成長と発達の特徴」p36
脳性麻痺の症状
脳性麻痺は、さまざまな症状を引き起こします。以下の4つのタイプにわけられます。
- 痙直型
- アテトーゼ型
- 運動失調型
- 混合型
01. 痙直型
脳性麻痺の中で最も一般的なタイプであり、筋肉の過剰な緊張や硬直を特徴とします。このタイプの患者は、四肢の筋肉が硬直し、伸展したまま固まることがあります。その結果、歩行や動作が制限されることがあります。
02. アテトーゼ型
筋肉の不随意運動やゆらぎを特徴とします。患者は手や足の不規則な動きや筋肉の緊張の変動に悩まされます。姿勢の維持や細かい動作の制御が困難になることがあります。
03. 運動失調型
運動の協調性や正確性の障害が特徴です。患者は姿勢の維持や運動の制御に難しさを感じ、不安定な歩行や手の震えが見られることがあります。
04. 混合型
上記のタイプの症状が複合的に現れる場合を指します。患者は複数の症状を組み合わせて示すことがあり、個別のタイプに明確に分類されることが難しい場合もあります。
脳性麻痺の症状は患者によって異なり、重度や範囲も個別に異なります。症状の程度やタイプに基づいて、適切な治療やリハビリテーションプログラムを設計することが重要です。また、個別の症状に合わせた支援や介護も提供されることがあります。
脳性麻痺の治療方法
脳性麻痺の治療は、症状の軽減や機能の改善を目指して行われます。以下の病院や医療機関で行われる4つの主な治療方法について簡単に説明します。
01. 薬物療法
02. 装具・補助具・ギプス
03. 手術療法
04. リハビリテーション
薬物療法
薬物療法は脳性麻痺の症状を管理するために使用されます。医師が抗痙攣薬や筋弛緩剤などを処方し、筋肉の緊張を和らげたり、不随意運動を抑制したりすることを目的とします。薬物療法は個々の患者の症状やニーズに合わせて調整されます。
装具・補助具・ギプス
病院では、装具や補助具、ギプスなどの支援具を使用することで、姿勢の矯正や筋肉のサポートを行います。例えば、歩行用の装具や手指の動きをサポートするためのスプリントなどが使用されることがあります。これらの支援具は医師が個別の患者のニーズに合わせて選定します。
手術療法
一部の脳性麻痺患者では、手術が必要とされる場合があります。手術の目的は、異常な筋肉の緊張を緩和したり、骨の異常を修正したりすることです。筋腱延長手術や手術による骨の整復などが病院で行われることがあります。
リハビリテーション
リハビリテーションは脳性麻痺の治療の中核を担っています。物理療法、作業療法、言語療法などが組み合わされ、機能の最大限の回復や日常生活での自立を促すことを目的とします。リハビリテーションは個別の患者の状態やニーズに合わせて計画され、筋力トレーニング、バランス訓練、動作パターンの改善などが行われます。
脳性麻痺の治療は継続的な取り組みが必要であり、多職種の専門家による総合的なアプローチが重要です。個々の患者の特性に応じた治療計画と個別の目標設定を通じて、最善の結果を得るために取り組まれます。また、家族や介護者の教育やサポートも重要な要素です。
薬物療法、装具・補助具・ギプス、手術療法、リハビリテーションは、それぞれ異なるアプローチを持ち、症状や患者のニーズに合わせて組み合わせることもあります。治療は病態の進行に応じて調整され、長期的なフォローアップと評価が行われます。
治療の目的は、患者の生活の質を向上させることです。それには、身体機能の改善、運動能力の向上、日常生活動作の自立、コミュニケーションスキルの向上などが含まれます。また、家族の負担軽減や社会参加の促進も重要な目標です。
脳性麻痺の治療は継続的な取り組みを要します。病院では治療チームが神経科医、リハビリテーション医、理学療法士、作業療法士、言語療法士、看護師、心理士などの専門家で構成され、患者の個別のニーズに合わせた包括的なケアを提供します。
脳性麻痺の治療は進歩しており、早期の診断と適切な介入が重要です。定期的なフォローアップと治療計画の調整により、患者の成長や発達に応じた最適な治療を継続することが求められます。
当リハビリセンターにおける
脳性麻痺のリハビリ
一般的な脳性麻痺のリハビリ
脳性麻痺の一般的なリハビリテーション方法には、理学療法、作業療法、言語聴覚療法があります。
01. 理学療法
02. 作業療法
03. 言語聴覚療法
理学療法
理学療法は、運動や身体機能の改善を促すために行われます。筋力トレーニング、バランス訓練、可動域の拡大などの運動プログラムが含まれます。また、歩行や動作のパターンを改善するために、歩行補助具や装具の使用も指導されることがあります。理学療法は、筋肉の柔軟性や強度を向上させ、身体の機能を最大限に活用するためのトレーニングを提供します。
作業療法
作業療法は、日常生活動作や手指の機能、認知能力の向上を目指して行われます。具体的な活動や課題を通じて、自立した生活や学校や職場での能力を向上させることを目的とします。個別に適切な活動や訓練が計画され、手指の動作や筆記、自己介助などのスキルの向上を支援します。
言語聴覚療法
言語聴覚療法は、コミュニケーションや言語理解の向上を目指して行われます。言語能力、発声、言葉の理解、コミュニケーションのスキルなどを評価し、適切なアプローチや練習を提供します。コミュニケーションツールや補助具の使用をサポートすることもあります。
これらのリハビリテーション方法は、脳性麻痺の症状や個別のニーズに合わせて組み合わせられます。病院内の治療チームが患者とその家族と協力し、適切な目標設定と計画を立て、継続的な支援を提供することで、患者の機能と生活の質を最大限に向上させることが目指されます。
当リハビリセンターの脳性麻痺のリハビリ
当リハビリセンターは、専門知識と他にない機能改善のための機器を兼ね備えたリハビリ施設です。骨・筋肉など発達の過程、身体機能の成長など個人差がありますが、麻痺手の使用方法、歩く姿勢やバランス、そして基礎的な動作等、お客様の改善されたいニーズに応えられるように努めております。施設における主な流れをご説明いたします。
- 電話、またはメールにてお問い合わせ
- 体験リハビリによるカウンセリング、動画撮影、全体の評価及びリハビリ
- 機能改善に向けた問題点や課題の整理
- 目標達成までのリハビリプラン、スケジュールの立案
- ニーズに合わせたリハビリ
- 再評価・目標への達成度確認
- 目標達成・ご卒業
当リハビリセンターは、医療保険で通われる病院、クリニックの外来リハビリなどと併用して利用することができます。
これら医療保険で行うリハビリと当リハビリセンターが行う保険外(自費)によるリハビリの違いとして下記が代表的です。
- お客様のニーズを優先
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脳性麻痺のリハビリは、お子さんの身体能力のみならず、発達、心理、環境、家庭と複雑に絡み合うと言われています。一概に「脳性麻痺」という病気でひと括りにできるものではなく、発達の状況や年齢、状態に合わせて「悩み」や「やりたい事」が異なり、私たちはお客様が求めているニーズ・希望に沿ってリハビリのプランとスケジュールを設定いたします。
- 専門のセラピストと最新テクノロジーを融合
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当リハビリセンターでは、最新のテクノロジーを使用したリハビリを行っています。人間本来の身体活動には、お客様ご自身の意思が欠かせませんが、リハビリ専用の装着型サイボーグ(ロボット)により、脳で「イメージした動作」を繰り返し、「実際の動作」とリンクすることによってさらに脳からの電気信号を活発化していきます。
上記専用の機器として、筑波大学が開発したロボットスーツ HAL®(Hybrid Assistive Limb®)を導入しています。様々な活用方法があり、どのような状態においてもまずは試していただくことがお勧めです。
ロボットによる動作を新しく学習することにより、実際に脳性麻痺など脳・神経に関する疾患を患った方に対して、歩行の獲得などADL(日常生活活動)に変化が見られた実績があります。
このようにセラピストの専門的な知識と経験、テクノロジーによるお客様の秘めている能力を引き出す事でより豊かな生活を目指します。
最後に
このように理学療法士(PT)や作業療法士(OT)のリハビリ専門の資格を持つセラピストと国際的に実績が豊富なロボットを組み合わせたリハビリが行える施設は日本ではまだまだ不足しています。大阪府では数えるだけしかなく、関西全域でみればこのような環境がない県もあります。
「もっとリハビリをして●●●がしたい!」等、これまで諦めてしまっていることに対しても希望を持っていただきたいと思います。
些細な事でも大丈夫です。脳性麻痺で困っている事がありましたら是非一度当リハビリセンターへお越しください。
いつでもお待ちしております。