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小脳出血で歩行が不安定?その原因と理学療法でできること

小脳出血で歩行が不安定?その原因と理学療法でできること

はじめに

小脳出血の後、歩行が不安定になり日常生活に支障が出ている方も多いのではないでしょうか。
ふらつきや、めまい、バランス感覚の低下など、様々な症状が現れます。この記事では、小脳出血による歩行の不安定さの原因と、理学療法でどのような改善が期待できるのかについて解説します。ご自身の状態に合ったリハビリテーションを見つけるためのヒントになれば幸いです。

見出し

  • 小脳出血と歩行の不安定さの関係
    1-1.小脳の役割と歩行
    1-2.小脳出血後の歩行の特徴
  • 理学療法でできること
    2-1.バランス訓練
    2-2.歩行訓練
    2-3.その他
  • 自費リハビリを選ぶメリット
    3-1.個別に対応できる
    3-2.長時間のリハビリが可能
    3-3.最新の治療法を受けられる
  • まとめ

小脳出血と歩行の不安定さの関係

1-1. 小脳の役割と歩行
小脳は脳の後部に位置し、運動の調整、バランスの維持、協調運動などの役割を担っています。
具体的には、筋肉の動きをスムーズにし正確なタイミングで筋収縮を制御することで、身体のバランスと姿勢を保っています。
歩行においても、小脳は重要な役割を果たします。
歩行は単に足を前に出すだけではなく、複雑な筋肉の連動とバランスの調整が必要です。
小脳が正常に機能することでスムーズな歩行が可能となり、躓きや転倒のリスクが減少します。

小脳の主要な機能として以下のような点が挙げられます

  • 運動の調整:小脳は運動の開始、維持、停止のタイミングを調整し、身体の動きが滑らかで一貫性のあるものになるようにします。
  • バランスの制御:小脳は視覚、前庭系(内耳の平衡感覚)そして筋肉からのフィードバックを受け取り、それらを統合してバランスを維持します。
  • 学習と適応:小脳は運動学習にも関与しており、新しい運動スキルを学習する際の適応能力を助けます。

1-2. 小脳出血後の歩行の特徴
小脳出血後の歩行には、いくつかの特徴的な問題が現れます。

  • 不安定な歩行:小脳が損傷されると、バランスを取る能力が低下し、歩行が不安定になります。歩幅が不揃いになったり、フラフラした歩行となり、しばしば転倒のリスクが増加します。
  • スムーズさの欠如:小脳の調整機能が低下するため、歩行がぎこちなく、スムーズな動きが難しくなります。急に方向を変えたり止まったりすることが困難になります。
  • 協調運動障害(失調):小脳出血後の典型的な症状である協調運動障害は、歩行中の足の動きが不規則で、バランスを失いやすくなります。歩行速度の変化や足を引きずるような動きが見られることもあります。
  • 姿勢の不安定さ:小脳出血後は姿勢を保つことが難しくなり、座っている時や立ち上がる時にも不安定さが見られることがあります。

これらの症状は日常生活に大きな影響を与え、患者が独立して生活する能力を制限することが多いです。
そのため小脳出血後の歩行訓練とリハビリテーションは非常に重要です。

理学療法でできること

2-1. バランス訓練
バランス訓練は小脳出血後の歩行改善において極めて重要です。
バランス訓練では立つ、座る、歩く際に必要な体幹の安定性を高めることを目指します。
具体的な訓練内容としては以下のようなものがあります

  • 静的バランス訓練:安定した姿勢を保つための訓練で、例えば片足立ちや椅子から立ち上がって保持するなどのシンプルな動作から始めます。
  • 動的バランス訓練:歩行中や方向転換、階段の昇降など、実際の動きを含むバランス訓練です。特に目を閉じて行うバランス訓練や不安定なサーフェスでの練習が効果的です。
  • 視覚フィードバックの使用:バランスを取るために視覚を使うことも有効です。鏡を使った訓練や視覚的な目標に向かって歩くことで、バランス感覚を改善します。

バランス訓練は、繰り返し行うことで脳に新しい運動パターンを学習させ小脳の機能を補うことが期待されます。

2-2. 歩行訓練
歩行訓練は、小脳出血後の患者の歩行機能の回復を目指すリハビリの一環です。
歩行訓練はバランス能力の向上とともに、足の筋力や持久力を強化し、歩行の安定性を高めます。

  • 歩行補助具の使用:杖やウォーカーを使って、初期の段階での歩行をサポートします。補助具を使うことで、バランスが不安定な状態でも歩行が可能になります。
  • トレッドミル訓練:トレッドミルを使用して、歩行速度や傾斜を調整しながら、持久力を高める訓練が行われます。ハーネスシステムを使ったトレッドミル訓練は、転倒リスクを減らしながら歩行訓練を進めることができます。
  • 段差訓練:階段の昇降や段差を使った訓練は、歩行中の足のリフトアップやバランス感覚の向上に役立ちます。
  • 異なる地面での訓練:砂利道や草地、滑りやすい床など、様々な地面での歩行訓練は、現実の環境での適応力を高めます。

2-3. その他の訓練

  • 筋力強化訓練:足の筋力を強化することで、歩行の安定性を向上させます。
  • ストレッチと柔軟性の向上:筋肉の柔軟性を高めることで、可動域の改善と歩行のスムーズさをサポートします。
  • 姿勢訓練:正しい姿勢を維持する訓練は歩行だけでなく、全体的なバランスの改善にも役立ちます。
  • 有酸素運動:有酸素運動は全身の持久力を高め、心肺機能の向上にも寄与します。これにより歩行中の疲労感を軽減し、より長時間の歩行が可能となります。

自費リハビリを選ぶメリット

3-1. 個別に対応できる
自費リハビリでは、患者一人ひとりの状態やニーズに応じた個別のリハビリプログラムを作成できます。
公的リハビリでは時間やリソースの制約があるため、すべての患者に完全に個別対応するのは難しいですが自費リハビリではその制約がありません。
患者の症状や回復の進度に合わせてプログラムを柔軟に調整できるため、より効果的なリハビリが期待できます。

また理学療法士が患者と密にコミュニケーションを取りながら進捗を確認し、必要に応じてアプローチを変えることが可能です。
これにより患者のモチベーションを維持しながら、個別の目標に向かって効率的にリハビリを進めることができます。

3-2. 長時間のリハビリが可能
一般的なリハビリテーション施設では時間制限があり、1回のセッションが30分から1時間程度であることが多いです。
一方、自費リハビリでは時間の制約が少なく、必要に応じて長時間のリハビリが可能です。
例えば、2時間以上の集中したリハビリを行うことも可能でより深い訓練や多角的なアプローチが取れます。

長時間のリハビリは、特に複雑な問題や長期的なリハビリが必要なケースにおいて有効です。
また、集中的にリハビリを行うことで早期に改善が見られることもあり、患者の生活の質を早く向上させることが可能です。

3-3. 最新の治療法を受けられる
自費リハビリでは、最新の治療法や技術を取り入れることが可能です。
例えば、最新のリハビリ機器やテクノロジーを使用した訓練、先端的なリハビリテーションの方法など公的な施設では提供されない治療が受けられる場合があります。
また、新しい研究成果やエビデンスに基づくリハビリテーションを迅速に取り入れることで、効果的なリハビリを実現します。

まとめ

小脳出血はバランスと歩行に重大な影響を与えますが、適切なリハビリテーションによってこれらの機能を回復することが可能です。
理学療法は小脳出血後の患者にとって重要な役割を果たし、個々の症状に合わせたバランス訓練や歩行訓練が行われます。
特に自費リハビリを選ぶことで、個別対応、長時間の訓練、最新の治療法など、患者にとって多くのメリットが得られます。
患者自身のニーズに合ったリハビリを選択することで、より効果的に歩行機能の改善を目指すことができます。

安原

執筆者:安原

施設長/理学療法士

施設長の安原です。
2019年に理学療法士免許を取得し大学卒業後、回復期病院と訪問リハビリで整形疾患や脳血管疾患を中心に経験し現在に至ります。
回復期病院では疾患の知識、治療技術の勉強(SJF、PNF、筋膜etc)に励み、チームリーダーや副主任を経験。
訪問リハビリでは在宅での日常生活動作を中心に介入しする。
一人ひとりの回復に対して集中して介入したいと思い、2023年9月から脳神経リハビリHL堺に勤務。
希望や悩みに対して寄り添い、目標とするゴールに向けて一緒に歩んでいければと思っています。