脳血管疾患からの回復を支援するPNFアプローチ

はじめに
「あの日から体が思うように動かない…」
脳血管疾患は、運動機能に深刻な影響を及ぼし今まで当たり前だった日常が一変してしまうことがあります。
リハビリテーションは、失われた機能を回復し再び自分らしい生活を送るために非常に重要な役割を果たします。
目次
- PNFアプローチという選択肢
- 脳血管疾患とPNF
- PNFの基本原則:5つの柱があなたを支える
- PNFの実際:あなたとセラピストの二人三脚
- PNFでこんな効果が期待できます
- PNFは単なる運動療法ではありません
PNFアプローチという選択肢
- 近年、様々なリハビリテーションアプローチが開発されていますが、その中でもPNF(固有受容性神経筋促通法)アプローチは脳血管疾患のリハビリにおいて高い効果を発揮することが知られています。
- PNFは、1940年代にアメリカで生まれ当初はポリオ患者のリハビリを目的としていました。しかし、その神経生理学的な理論に基づいた運動療法は、脳卒中患者のリハビリにも応用できることが示され、神経と筋肉の連携を最大限に引き出すリハビリテーションとして広く普及しました。

脳血管疾患とPNF
- 脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳の一部が損傷し様々な機能障害を引き起こします。運動機能障害はその中でも代表的なもので、麻痺や筋力低下、バランス障害などが現れます。
- PNFは、脳卒中によって損傷した神経回路の代替経路を形成し、残された機能を最大限に活用することで運動機能の回復を促します。
PNFの基本原則:5つの柱があなたを支える
PNFには以下の5つの基本的な原則があります。
- 刺激の使用: 触覚、視覚、聴覚などの外部刺激を効果的に利用し、眠っていた神経や筋肉を呼び覚ますように運動を促します。例えば、セラピストが患者の体に触れたり、声かけをしたり、特定の方向を見させたりすることで運動を促します。
- 抵抗の調整: セラピストがあなたの状態に合わせて適切な抵抗をかけ、筋肉の収縮を促進します。抵抗はあなたの能力に合わせて調整されるので無理なく取り組めます。
- 段階的な学習: 簡単な運動から始まり、徐々に複雑な運動へとステップアップしていきます。自信を持って運動に取り組めるようにセラピストが丁寧にサポートします。
- パターンの重視: 日常生活で必要な動作を想定した複数の関節が連動した機能的な運動パターンを重視します。これにより、より実践的な運動能力を身につけることができます。
- 反復練習: 繰り返し運動を行うことで神経回路が強化され、運動技能が向上します。セラピストは、あなたが飽きずに意欲的に練習に取り組めるように様々な工夫を凝らします。

PNFの実際:あなたとセラピストの二人三脚
PNFはセラピストと患者が1対1で行うリハビリテーションです。セラピストは、あなたの状態に合わせて適切な運動パターンを選択し抵抗をかけながら運動を誘導します。あなたは、セラピストの指示に従って運動を行い、その過程で様々な感覚情報を受け取ります。この感覚情報が脳の再学習を促し、運動機能の回復につながると考えられています。
PNFでこんな効果が期待できます
PNFアプローチによって、以下の効果が期待できます。
- 麻痺した手足の運動機能が回復し日常生活動作がスムーズになります。
- バランス感覚が向上し転倒のリスクを軽減します。
- 筋力が向上し力強い体を取り戻します。
- 脳の再学習を促し、より効率的な回復をサポートします。
PNFは単なる運動療法ではありません
PNFは、あなたの意欲や動機づけを高めるための工夫も凝らされています。セラピストはあなたとのコミュニケーションを密にし、目標達成に向けて共に努力することで、あなたの主体的なリハビリ参加を促します。

まとめ
今回、脳卒中後のリハビリテーションとして、PNF(固有受容性神経筋促通法)アプローチをご紹介します。 脳卒中は運動機能に深刻な影響を及ぼしますが、リハビリテーションによって回復が期待できます。 PNFアプローチは、麻痺した手足の運動機能回復、バランス感覚向上、筋力向上、脳の再学習促進などに効果が期待されています。 セラピストと患者が1対1で行うPNFは、単なる運動療法ではなく患者の意欲や動機づけを高める工夫も凝らされています。 PNFアプローチは、脳卒中からの回復を支援する有効な手段の一つです。 具体的なリハビリテーションの内容は患者さんの状態によって異なりますので、ご興味のある方は当施設スタッフにご相談ください。

執筆者:池田
理学療法士
理学療法士の池田です。
2018年に理学療法士免許を取得し大学を卒業後、回復期病院のリハビリテーション病棟にて勤務。2021年に急性期病院の脳外科病棟にて勤務。2022年に訪問リハビリにて勤務。2025年より脳神経リハビリHL堺にて勤務となります。
回復期病院では、疾患の知識や治療技術の勉強に励み、外部研修に積極的に参加。
急性期病院では、脳外科病棟にて勤務。脳血管疾患のリハビリに従事し、発症間もなくの患者様の回復状況を予測する為の研究に参加。
訪問リハビリでは、日常生活状況に合わせたリハビリや住宅環境の相談など介入。
リハビリでは、本人様にとって安心して出来る日常生活動作を増やして行くと共に、特に歩ける生活を大事にしたいと考えます。よりよい生活が送れるように全力で援助をさせて頂きます。