脳梗塞回復の鍵はこれだ!理学療法士の視点で解説
目次
- 脳梗塞で何が起きる?後遺症のメカニズムを理解しよう
- あなたに合ったリハビリを見つけよう!回復を早める3つのポイント
- 自宅でできる!効果的なリハビリテーションメニューを紹介
- 脳梗塞リハビリに関するよくある質問
- まとめ
はじめに
脳梗塞を経験したあなたは、今まで当たり前にできていたことができなくなり、大きな不安と恐怖に襲われているかもしれません。 身体の麻痺、言葉が出にくい、感覚が鈍い…その症状は人それぞれであり、先の見えない不安に押しつぶされそうになることもあるでしょう。
しかし、どうか諦めないでください!
脳梗塞からの回復は、決して夢物語ではありません。 脳には「可塑性」と呼ばれる、傷ついた機能を補う素晴らしい能力が備わっています。そして、その力を最大限に引き出すための鍵となるのが、「適切なリハビリテーション」と「あなたの諦めない心」 なのです。
私はこれまで、病院のリハビリテーション室から、在宅訪問、そして自費リハビリまで、様々な現場で多くの脳梗塞患者様のリハビリに携わってきました。その経験から自信を持って断言します。
適切なリハビリと、そしてあなたの努力次第で、脳梗塞からの回復は大きく変わる可能性を秘めている のです。
この記事では脳梗塞後のリハビリに関する正しい知識、そして回復への道のりを理学療法士の視点から、専門用語を交えつつもわかりやすく解説していきます。
「自分にはもう無理だ…」と諦める前に、ぜひ最後まで読んでみてください!そこに、あなたの未来を変える希望の光を見出すことができるはずです。
脳梗塞で何が起きる?後遺症のメカニズムを理解しよう
1-1. 脳梗塞の種類と特徴 – 知っておきたい3つのタイプ
脳梗塞は、大きく分けて以下の3つのタイプに分類されます。
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脳血栓症
動脈硬化などによって血管の内壁が狭窄・閉塞し、血栓(血の塊)ができてしまうことで、脳への血流が途絶するタイプです。 高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病や、喫煙、加齢などがリスク因子として挙げられます。 -
脳塞栓症
心臓などでできた血栓が血流に乗って脳の血管に詰まるタイプです。 心房細動などの不整脈や心臓弁膜症など、心臓に基礎疾患がある場合に多くみられます。 -
ラクナ梗塞
脳の深部にある細い血管(穿通枝)が閉塞するタイプです。 比較的軽症なことが多く、自覚症状がない場合もあります。 高血圧や糖尿病との関連が指摘されています。
それぞれのタイプによって、症状や回復過程、予後も異なってきます。 あなたがどのタイプの脳梗塞であったのか、担当医に確認してみましょう。
1-2. なぜリハビリが必要?「脳の可塑性」という希望
脳梗塞によって損傷を受けた脳細胞は、残念ながら自然に再生することはありません。 しかし、脳には「可塑性(neuroplasticity)」という驚くべき能力が備わっています。
可塑性とは、脳が経験や学習によって自ら構造や機能を変化させる能力のことです。 脳は、損傷を受けた部分を他の神経細胞が補完するように、神経回路を新たに形成したり、既存の回路の働きを強化したりすることで、失われた機能を回復しようと試みます。
リハビリテーションは、この脳の可塑性を最大限に引き出すために非常に重要です。 繰り返し運動を行うこと、五感を刺激すること、日常生活に近い動作を練習することなどを通して脳に適切な刺激を与え続けることで、神経回路の再編成を促し、機能回復を促進することができるのです。
あなたに合ったリハビリを見つけよう!回復を早める3つのポイント
2-1. 回復期リハビリテーション:集中的なリハビリで機能回復を最大限に
回復期リハビリテーションは、発症から間もない時期に行われる集中的なリハビリテーションです。この時期は、脳の可塑性が特に高まっているため、集中的なリハビリテーションによって、より多くの機能回復を期待できます。
回復期リハビリテーションは、主に病院などの医療機関で行われ、専門のスタッフによって、患者様一人ひとりの症状や状態に合わせたリハビリテーションプログラムが作成・実施されます。
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理学療法
麻痺した手足の運動機能回復、歩行練習、筋力トレーニング、関節可動域訓練などを行います。 -
作業療法
着替えや食事、トイレなどの日常生活動作の練習、調理や家事などの応用動作の練習、高次脳機能障害に対する訓練などを行います。 -
言語聴覚療法
失語症、構音障害、音声障害、嚥下障害など、言語聴覚に問題が生じた場合のリハビリテーションを行います。コミュニケーション手段の獲得、食事の安全確保などを目指します。
2-2. 維持期リハビリテーション:継続が鍵!自宅でもできる運動を習慣化
回復期リハビリテーション後は、自宅や介護施設などで維持期リハビリテーションを継続することが、長期的な視点で見たときに非常に重要になります。
維持期リハビリテーションでは、回復した機能を維持・向上させるとともに、日常生活での活動性を高め、社会参加を促進することを目指します。 回復期に比べて、リハビリテーションの頻度や強度が低下してしまう場合もあるため、ご自身の生活に合わせたリハビリテーション方法を選択していくことが大切です。
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訪問リハビリテーション
理学療法士や作業療法士などが自宅を訪問し、個別にリハビリテーションを提供します。 住み慣れた環境でリハビリテーションを受けられること、生活に密着した内容を練習できることなどがメリットです。 -
通所リハビリテーション
デイサービスセンターなどで、他の利用者と一緒にリハビリテーションやレクリエーションを行います。 社会とのつながりを持ちながらリハビリテーションを継続できること、他の利用者と交流することで刺激を受けることができることなどがメリットです。 -
自主トレーニング
理学療法士などから指導された運動を、自宅で継続して行います。 自分のペースでリハビリテーションを進めることができること、費用を抑えることができることなどがメリットです。
2-3. 自費リハビリ:さらなる回復を目指す選択肢
近年、上記のような従来のリハビリテーションに加えて、「自費リハビリ」という選択肢も注目されています。
自費リハビリは、文字通り自己負担で利用するリハビリテーションサービスです。 健康保険が適用されない分、費用はかかりますが、その分、一人ひとりのニーズに合わせたきめ細かいサービスを受けられる点が大きなメリットと言えるでしょう。
従来のリハビリテーションでは、時間や回数が限られてしまう、集団でのリハビリのため個別の症状に対応しきれない、といった悩みを持つ方もいるかもしれません。 自費リハビリでは、そのような悩みを解消できる可能性があります。
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マンツーマンの個別対応
あなたの状態や目的に合わせた、オーダーメイドのプログラムを作成し、実施します。 -
専門性の高いセラピスト
専門的な知識や技術を持った理学療法士などから、質の高いリハビリテーションを受けることができます。 -
充実した環境と設備
最新の機器や設備を導入している施設もあり、効果的なリハビリテーションが期待できます。
2-4. 回復を早める3つのポイント
脳梗塞からの回復には個人差が大きく、回復速度や程度も人それぞれです。 しかし、以下の3つのポイントを意識することで、より効果的に機能回復を目指せると考えられています。
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早期リハビリテーション開始
脳の可塑性が高い時期に集中的なリハビリテーションを開始することで、その後の回復を大きく左右します。 発症直後から、可能な範囲でリハビリテーションを開始し、継続していくことが重要です。 -
継続は力なり
リハビリテーションの効果を高めるためには、継続することが重要です。 諦めずに、コツコツと努力を続けることが大切です。 時に辛く、諦めそうになることもあるかもしれません。 しかし、諦めずに努力を続けることで、必ず道は開けます。 -
積極的な姿勢を持つ
リハビリテーションは、受け身ではなく、自ら積極的に取り組むことが重要です。 「治りたい」という強い気持ちを持ち続けましょう。 あなたの「治りたい」という気持ちは、脳の可塑性を高め、回復を促進させるための大きな原動力となります。
自宅でできる!効果的なリハビリテーションメニューを紹介
3-1. 関節可動域訓練:筋肉や関節の柔軟性を高める
脳梗塞によって麻痺が残ると、筋肉が硬くなってしまったり(痙縮:spasticity)、関節の動きが悪くなったり(関節拘縮:joint contracture)することがあります。 関節可動域訓練は、これらの症状を改善し、関節の動きをスムーズにするための運動です。
【具体的な運動方法】
1. 麻痺した腕を反対の手で支え、ゆっくりと上に持ち上げます(肩関節屈曲)。
2. 無理のない範囲で、肘を曲げ伸ばしします(肘関節屈曲・伸展)。
3. 同様に、手首や指の関節も動かしてみましょう(手関節屈曲・伸展、手指屈曲・伸展)。
4. 足についても同様に行いましょう(股関節屈曲・伸展、膝関節屈曲・伸展、足関節底屈・背屈)。
3-2. 筋力トレーニング:筋力低下を防ぎ、日常生活動作をスムーズに
脳梗塞によって筋力が低下すると、歩く、立つ、座るといった基本的な動作が困難になることがあります。 筋力トレーニングは、低下した筋力を強化し、日常生活動作をスムーズに行えるようにするための運動です。
【具体的な運動方法】
1. 椅子に座り、背筋を伸ばします。
2. 麻痺した足をゆっくりと持ち上げます(股関節屈曲)。
3. 数秒間キープし、ゆっくりと元の位置に戻します。
4. 無理のない重さのものを持って、持ち上げたり、下ろしたりする運動も効果的です(上肢挙上訓練)。
3-3. バランス訓練:転倒予防に効果的!
脳梗塞後は、バランス感覚が低下し、転倒しやすくなることがあります。 バランス訓練は、バランス感覚を取り戻し、転倒を予防するための運動です。
【具体的な運動方法】
1. 壁や椅子の背もたれに手をついて立ちます。
2. 片足立ちに挑戦してみましょう。
3. 最初は短い時間から始め、徐々に時間を延ばしていきます。
4. バランスディスクやバランスボードなどの不安定な足場の上で立つ練習も効果的です。
脳梗塞リハビリに関するよくある質問
Q1. リハビリテーションはいつまで続ければいいですか?
A1. 脳梗塞からの回復には個人差があるため、リハビリテーション期間も一概には言えません。 一般的には、発症から半年から1年程度は集中的なリハビリテーションを行い、その後も維持期リハビリテーションを継続していくことが推奨されています。 しかし、数年経ってからでも機能回復が見られるケースもあるため、諦めずにリハビリテーションを継続していくことが大切です。
Q2. リハビリテーション中に痛みが出た場合はどうすればいいですか?
A2. リハビリテーション中に痛みが出た場合は、無理せず中止し、理学療法士などに相談してください。 痛みが強い場合は、リハビリテーション内容を調整する必要があるかもしれません。 痛みの原因を探り、適切な対応をとることで、安全かつ効果的にリハビリテーションを進めることができます。
Q3. リハビリテーションの効果が出ないと感じたらどうすればいいですか?
A3. リハビリテーションの効果は、目に見える形で現れるまでに時間がかかる場合もあります。 焦らず、根気強くリハビリテーションを続けることが大切です。 もし、不安に感じることがあれば、遠慮なく理学療法士などに相談してみましょう。 あなたの不安や悩みに寄り添い、適切なアドバイスやサポートを提供してくれるはずです。
まとめ
脳梗塞は、決して簡単に乗り越えられるものではありません。 しかし、適切なリハビリテーションと、諦めない気持ちがあれば、必ず回復へと進んでいけます。
「可塑性」という脳の驚くべき力を信じ、焦らず、自分のペースでリハビリテーションに取り組んでいきましょう。 そして、私たち理学療法士は、あなたの回復の道のりを、全力でサポートしていきます。
諦めずに、一緒に頑張っていきましょう!
このブログが、脳梗塞を経験された方々、そしてそのご家族にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。
![安原](https://noureha-sakai.com/wp-content/uploads/92a529d67e8e3c9bb456e239b72fdb00.jpg)
執筆者:安原
施設長/理学療法士
施設長の安原です。
2019年に理学療法士免許を取得し大学卒業後、回復期病院と訪問リハビリで整形疾患や脳血管疾患を中心に経験し現在に至ります。
回復期病院では疾患の知識、治療技術の勉強(SJF、PNF、筋膜etc)に励み、チームリーダーや副主任を経験。
訪問リハビリでは在宅での日常生活動作を中心に介入しする。
一人ひとりの回復に対して集中して介入したいと思い、2023年9月から脳神経リハビリHL堺に勤務。
希望や悩みに対して寄り添い、目標とするゴールに向けて一緒に歩んでいければと思っています。