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脊髄損傷とは?リスクと症状、予後について

脊髄損傷とは?リスクと症状、予後について

はじめに

脊髄損傷は、脊髄に対する外的または内的な損傷によって引き起こされる深刻な状態です。
脊髄は神経信号を脳と身体の各部分との間で伝達する重要な役割を担っており、その損傷は運動能力や感覚に大きな影響を及ぼします。
脊髄損傷を理解することは、患者自身やその家族にとって重要な課題です。
この記事では脊髄損傷のリスク要因、主な症状、そして予後について詳しく解説します。
脊髄損傷の理解を深め、より良い生活を送るための手助けとなれば幸いです。

目次

  • 脊髄損傷とは?
  • 脊髄損傷のリスク要因
    2.1外的要因
    2.2内的要因
  • 脊髄損傷の主な症状
    3.1運動機能の障害
    3.2感覚機能の障害
    3.3自律神経の影響
  • 脊髄損傷の予後
    4.1重症度と回復の可能性
    4.2リハビリテーションの役割
  • 脊髄損傷の予防と対策
  • まとめ

脊髄損傷とは?

脊髄損傷は、脊髄に対する損傷によって神経機能が損なわれる状態を指します。
脊髄は脳から下に伸びる神経の束で、体の各部分に信号を送る役割を果たしています。
脊髄損傷は外的な外傷(事故や転倒など)や内的な病理(腫瘍や血管障害など)によって引き起こされます。
損傷の部位や程度により、さまざまな症状が現れ、患者の生活の質に大きな影響を与えます。

脊髄は頚椎、胸椎、腰椎、仙椎といった部位で構成されており、損傷の位置によって運動機能や感覚が異なります。
頚椎損傷の場合は上肢や呼吸機能にも影響が及ぶことが多く、腰椎損傷では下肢の機能に主に影響を与えます。
このように、損傷の部位に応じた理解が重要です。

脊髄損傷のリスク要因

2.1外的要因
脊髄損傷を引き起こす外的要因には、以下のようなものがあります。

  • 交通事故:特にバイクや自転車の事故が多く、脊髄を直接的に損傷することがあります。信号無視や過信速度による衝突は特に危険です。
  • スポーツ事故:ラグビーやアメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツでは、衝撃によって脊髄損傷が発生することがしばしばあります。特に未成年者や若年者は、過信からくる無茶なプレイがリスクを高めます。
  • 転倒:高齢者に多く見られるリスクで、特に骨粗しょう症などの既往がある場合は、軽微な転倒でも脊髄損傷を引き起こすことがあります。
  • 暴力行為:犯罪の一環としての攻撃や事故により、脊髄が損傷することもあります。特に銃創やナイフによる刺傷が原因となる場合があります。

2.2内的要因
内的な要因としては、以下のようなものが考えられます。

  • 腫瘍:脊髄内外に発生する腫瘍が神経を圧迫することで、損傷を引き起こすことがあります。悪性腫瘍だけでなく、良性の腫瘍でも圧迫によって問題が生じることがあります。
  • 血管障害:脊髄への血流が減少することで機能が障害されることがあります。たとえば、脊髄梗塞がこれに該当します。血管が詰まることによって、脊髄に栄養が行き渡らず、機能障害が起こるのです。
  • 感染症:特定の感染症が脊髄に影響を与えることがあります。ウイルスや細菌による感染は、特に注意が必要です。例えば、髄膜炎が進行すると脊髄に損傷を及ぼすことがあります。
  • 遺伝的要因:先天的な異常や遺伝的素因も脊髄損傷のリスクを高めることがあります。たとえば、脊髄空洞症(ケルニッヒ病)などは、遺伝的要因が関与しています。

脊髄損傷の主な症状

3.1運動機能の障害
脊髄損傷により運動神経が損傷されることで、体の特定の部分の動きが制限されることがあります。
完全損傷の場合、下半身や上半身の運動機能が完全に失われることがあります。
一方、部分的な損傷の場合は、動きに制限があっても一部の機能が残ることがあります。
脊髄損傷のレベルにより、四肢麻痺や対麻痺などの症状が現れます。

  • 四肢麻痺:頚髄が損傷された場合、全身の運動機能が失われることがあります。
  • 対麻痺:胸椎または腰椎が損傷された場合、両下肢の運動機能が失われることが一般的です。

3.2感覚機能の障害
脊髄損傷は感覚神経にも影響を与えるため、痛み、温度、触覚などの感覚が失われることがあります。
これにより、外的な刺激に対して適切に反応できなくなります。
たとえば、感覚が鈍ることで熱いものや冷たいものに気づかず、火傷や凍傷を引き起こすリスクが高まります。

3.3自律神経の影響
脊髄は自律神経系にも関与しており、これが損傷されると、血圧の調整、心拍数、内臓機能に影響が出ることがあります。
これにより、尿失禁や便秘、発汗異常などの症状が現れることがあります。
特に、脊髄損傷による低血圧や反射性自律神経過活動(ASIA分類)により、患者は気分不良やめまいを感じることがあります。

脊髄損傷の予後

4.1重症度と回復の可能性
脊髄損傷の重症度は、ASIA(American Spinal Injury Association)による分類によって評価されます。
完全損傷と不完全損傷に分けられ、完全損傷では運動機能や感覚が完全に失われますが、不完全損傷では一部の機能が残ることがあります。

  • 完全損傷:運動機能も感覚機能も全く残らない状態で、一般的には回復の見込みが薄いとされます。
  • 完全損傷:運動機能や感覚機能が一部残る場合、リハビリテーションを通じて回復が期待できることがあります。

患者の年齢や健康状態、リハビリテーションへの取り組みも回復の可能性に影響を与えます。
特に、早期の介入が重要です。

4.2リハビリテーションの役割
リハビリテーションは、脊髄損傷からの回復において非常に重要です。
理学療法士や作業療法士と連携し、患者の状態に応じた個別のリハビリ計画を立てることで、運動機能や日常生活動作の改善を図ります。

リハビリテーションの内容には以下のようなものがあります。

  • 運動療法:筋力を維持・強化するためのエクササイズが含まれます。特に、残存する機能を最大限に活用するためのトレーニングが重要です。
  • 日常生活動作訓練:食事、入浴、着替えなど、日常生活を自立して行えるようにするための訓練です。生活の質を向上させるために、実践的な訓練が行われます。
  • 心理的サポート:脊髄損傷は精神的にも大きな影響を与えるため、カウンセリングやサポートグループへの参加が推奨されます。

脊髄損傷の予防と対策

脊髄損傷を予防するためには、以下のような対策が有効です。

  • 安全運転:交通事故を避けるために、安全運転を心がけましょう。シートベルトやヘルメットの着用は必須です。
  • スポーツ時の装備:コンタクトスポーツでは適切な保護具を着用することが重要です。特に、首や背中を守る装具を使用することでリスクを軽減できます。
  • 転倒防止:特に高齢者は、住環境を見直し、転倒を防ぐための対策を講じることが必要です。滑りやすい場所にはマットを敷いたり、手すりを取り付けたりすることが効果的です。
  • 健康的な生活習慣:定期的な運動や栄養バランスの取れた食事が、脊髄の健康を維持するために役立ちます。特に、骨の健康を維持するためにカルシウムやビタミンDを意識的に摂取することが重要です。

まとめ

脊髄損傷は深刻な状態であり、運動機能や感覚に多大な影響を及ぼします。
しかし、リハビリテーションや適切なサポートを受けることで、改善の可能性があります。
脊髄損傷のリスク要因や症状を理解し、自分自身や周囲の人々の健康を守るために、日常生活での予防策を講じることが重要です。
脊髄損傷についての知識を深め、より良い生活を送るための第一歩を踏み出しましょう。

脊髄損傷は生活の質を大きく変える可能性がありますが、正しい情報と適切な支援があれば、希望を持って回復に向かうことができます。
大切なのは、一人で抱え込まず、専門家やサポートグループと連携しながら、共に進んでいくことです。
あなた自身の健康を大切にし、周囲の人々と支え合いながら、明るい未来を目指していきましょう。

安原

執筆者:安原

施設長/理学療法士

施設長の安原です。
2019年に理学療法士免許を取得し大学卒業後、回復期病院と訪問リハビリで整形疾患や脳血管疾患を中心に経験し現在に至ります。
回復期病院では疾患の知識、治療技術の勉強(SJF、PNF、筋膜etc)に励み、チームリーダーや副主任を経験。
訪問リハビリでは在宅での日常生活動作を中心に介入しする。
一人ひとりの回復に対して集中して介入したいと思い、2023年9月から脳神経リハビリHL堺に勤務。
希望や悩みに対して寄り添い、目標とするゴールに向けて一緒に歩んでいければと思っています。