パーキンソン病の初期症状を見逃さないために知っておきたいこと
はじめに
パーキンソン病は進行性の神経変性疾患であり、主に運動機能に影響を与えます。
早期に発見し適切な治療を受けることで、症状の進行を遅らせ、生活の質を向上させることができます。
しかし初期症状は非常に微細で、日常生活の中で見逃されがちです。
この記事ではパーキンソン病の初期症状を見逃さないために知っておくべき重要なポイントについて解説します。
目次
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パーキンソン病とは?
1-1 パーキンソン病の概要
1-2 パーキンソン病の原因 -
初期症状を見逃さないためのポイント
2-1 体の震え(振戦)
2-2 筋肉のこわばり(硬直)
2-3 動作の遅れ(動作緩慢)
2-4 姿勢の変化
2-5 筋肉痛や疲労感 -
非運動症状に注目
3-1 睡眠障害
3-2 嗅覚の低下
3-3 精神的な変化
3-4 自律神経症状 -
早期発見のためのチェックリスト
4-1 自分でできる簡単なチェック
4-2 家族や友人の協力 -
受診のタイミングと診断方法
5-1 専門医の受診
5-2 診断に用いられる検査 - まとめ
パーキンソン病とは?
1-1 パーキンソン病の概要
パーキンソン病は運動機能の低下を引き起こす進行性の神経変性疾患です。
主にドーパミンを分泌する神経細胞が減少することが原因であり、このドーパミンは脳内で運動の調整や制御を行う重要な役割を担っています。
この病気の名前は、1817年に病態を初めて記述したジェームズ・パーキンソン博士に由来しています。
パーキンソン病は主に中高年に発症し、男女を問わず発症します。
1-2 パーキンソン病の原因
パーキンソン病の具体的な原因はまだ完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。
遺伝的要因や環境要因、加齢、酸化ストレス、炎症などが挙げられます。
また、パーキンソン病の患者の脳内では、レビー小体と呼ばれる異常なタンパク質の蓄積が観察されることが多いです。
これらの要因が組み合わさって、神経細胞の死滅を引き起こし、結果としてドーパミンの不足を招くとされています。
初期症状を見逃さないためのポイント
2-1 体の震え(振戦)
パーキンソン病の初期症状として最もよく見られるのが体の震え、特に手や指の震えです。
これを振戦と呼びます。
振戦は安静時に最も顕著であり、動作をしているときには軽減することがあります。
片手の指が小刻みに震える現象から始まり、徐々に両手、さらには全身に広がることもあります。
このような震えは、日常生活において明確な兆候となりますので、注意深く観察することが重要です。
2-2 筋肉のこわばり(硬直)
筋肉のこわばり、あるいは硬直もパーキンソン病の初期症状の一つです。
これは筋肉が緊張し、動作がぎこちなくなる状態を指します。
歩行中に腕が自然に振れない、関節がスムーズに動かないなどの症状が見られます。
筋肉のこわばりは痛みを伴うこともあり、特に体を動かしたり、ストレッチをする際に感じやすいです。
2-3 動作の遅れ(動作緩慢)
動作が遅くなること、すなわち動作緩慢(ブラジキネジア)も初期症状の一つです。
これは、動き始めるのに時間がかかる、動作が遅くなるといった形で現れます。
例えば、歩き始めるときに足が前に出ない、座っている状態から立ち上がるのが難しいなどの症状が見られます。
動作緩慢は日常生活において非常に不便を感じさせるものであり、早期に気付くことが大切です。
2-4 姿勢の変化
パーキンソン病の初期段階では、姿勢の変化も観察されることがあります。
患者は前かがみの姿勢を取りやすくなり、バランスを崩しやすくなります。
これは筋肉のこわばりや動作の遅れと関連しており、転倒のリスクを高める要因となります。
特に高齢者の場合、転倒は骨折や他の重大なけがを引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
2-5 筋肉痛や疲労感
原因不明の筋肉痛や疲労感もパーキンソン病の初期症状として現れることがあります。
これらの症状は、筋肉のこわばりや動作緩慢によるものと考えられます。
特に、休息後にも筋肉痛が続く場合や通常の活動で疲労を感じる場合には、パーキンソン病の可能性を考慮する必要があります。
非運動症状に注目
3-1 睡眠障害
パーキンソン病の初期症状には、運動症状だけでなく非運動症状も含まれます。
その一つが睡眠障害です。
夜間の頻繁な目覚めや不眠、日中の過度な眠気が見られることがあります。
特に、レム睡眠行動障害(夢を見ている間に体を動かす、話すなどの行動をとる障害)がパーキンソン病の初期に現れることが知られています。
3-2 嗅覚の低下
嗅覚の低下もパーキンソン病の初期症状の一つです。
匂いを感じにくくなることがあり、これがパーキンソン病の発症の数年前から現れることがあります。
例えば、食べ物の匂いが分からなくなる、香水や花の匂いを感じなくなるといった症状が見られます。
3-3 精神的な変化
パーキンソン病の初期には、精神的な変化も見られることがあります。
うつ病や不安感が増すことがあり、これが日常生活に大きな影響を与えることがあります。
パーキンソン病によるドーパミンの減少は、脳内の神経伝達物質のバランスを崩し、精神的な症状を引き起こすことがあります。
3-4 自律神経症状
自律神経症状もパーキンソン病の初期に現れることがあります。
これには便秘、頻尿、発汗異常などが含まれます。
自律神経は体内のさまざまな機能を調整する役割を果たしており、パーキンソン病の進行に伴ってこれらの機能が障害されることがあります。
早期発見のためのチェックリスト
4-1 自分でできる簡単なチェック
パーキンソン病の初期症状を見逃さないためには、日常生活の中で自分自身で簡単なチェックを行うことが重要です。
以下の質問に「はい」と答える項目が多い場合は、医師に相談することをお勧めします。
- 片手や片足が小刻みに震えることがありますか?
- 動き始めるのに時間がかかることがありますか?
- 姿勢が前かがみになりがちですか?
- 理由もなく筋肉痛や疲労感を感じることがありますか?
- 夜間に頻繁に目覚めたり、日中に過度な眠気を感じることがありますか?
- 匂いを感じにくくなったことがありますか?
- 気分が落ち込みやすく、不安を感じることがありますか?
- 便秘や頻尿、発汗異常などの症状が現れていますか?
4-2 家族や友人の協力
パーキンソン病の初期症状は、自分では気付きにくいことがあります。
家族や友人の協力を得て、異変に気付いた場合は早めに医師に相談することが重要です。
例えば、以下のような点に注意してもらうと良いでしょう。
- 歩き方がぎこちなくなっている
- 表情が乏しくなっている
- 声が小さくなり、話し方が変わった
- 小さな字を書くのが難しくなった
家族や友人がこれらの変化に気付いた場合、早期発見につながる可能性があります。
受診のタイミングと診断方法
5-1 専門医の受診
疑わしい症状がある場合、早めに神経内科や専門医を受診することが重要です。
パーキンソン病は早期に診断されることで、適切な治療が受けられ、症状の進行を遅らせることが可能です。
専門医は症状の評価や身体検査を行い、診断を確定するための詳細な検査を提案します。
5-2 診断に用いられる検査
パーキンソン病の診断には、いくつかの検査が用いられます。
代表的な検査には以下のようなものがあります。
- MRIやCTスキャン: 脳の構造を詳しく調べることで、他の疾患との鑑別を行います。
- ドーパミン輸送体のイメージング検査(DATスキャン): ドーパミンを分泌する神経細胞の状態を評価するための特殊な画像検査です。
- 血液検査や尿検査: 他の疾患を除外するために行われます。
これらの検査を組み合わせることで、パーキンソン病の診断が確定されます。診断が確定した後は、個々の症状に応じた治療計画が立てられます。
まとめ
パーキンソン病は進行性の神経変性疾患であり、早期に発見し適切な治療を受けることで生活の質を向上させることができます。
初期症状は非常に微細で見逃されがちですが体の震えや筋肉のこわばり、動作の遅れ、姿勢の変化、筋肉痛や疲労感といった運動症状に加え、
睡眠障害や嗅覚の低下、精神的な変化、自律神経症状などの非運動症状にも注意を払うことが重要です。
日常生活の中での些細な変化に気付き、早期に医師に相談することがパーキンソン病の早期発見につながります。
家族や友人と協力し、健康管理に努めることで症状の進行を抑え、より健やかな生活を送ることができます。
是非この情報を役立て、早期発見と適切な治療を心がけましょう。
執筆者:安原
施設長/理学療法士
施設長の安原です。
2019年に理学療法士免許を取得し大学卒業後、回復期病院と訪問リハビリで整形疾患や脳血管疾患を中心に経験し現在に至ります。
回復期病院では疾患の知識、治療技術の勉強(SJF、PNF、筋膜etc)に励み、チームリーダーや副主任を経験。
訪問リハビリでは在宅での日常生活動作を中心に介入しする。
一人ひとりの回復に対して集中して介入したいと思い、2023年9月から脳神経リハビリHL堺に勤務。
希望や悩みに対して寄り添い、目標とするゴールに向けて一緒に歩んでいければと思っています。