脳の可塑性とは?

はじめに
脳の可塑性(かそせい)とは、脳が経験や学習、損傷に応じてその構造や機能を変化させる能力のことです。
あなたの脳は、一生を通じて適応し続ける驚くべき力を持っています。
かつては、「脳の細胞は一度失われると再生しない」と考えられていました。
しかし、近年の研究によって、適切な刺激を与えることで神経細胞のネットワークが再構築され、損傷を受けていない部分が失われた機能を補うことができると分かってきました。つまり、脳はトレーニング次第で回復し、新しい道を切り開くことができるのです。
今回は、脳血管リハビリを継続していく意義について解説したいと考え、本稿を書きます。

目次
- 脳卒中後のリハビリと脳の可塑性
- 脳の可塑性を高めるリハビリ方法
- 脳の可塑性を支える仕組み
- 最新の研究と技術
脳卒中後のリハビリと脳の可塑性
脳卒中後のリハビリでは、この脳の可塑性を活用し失われた機能を回復させることを目指します。
リハビリを続けることで、損傷した神経細胞の働きを他の神経細胞が補い、運動機能や言語機能の改善が期待できます。
脳の可塑性を高めるリハビリ方法
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反復練習
繰り返し同じ動作を行うことで、新たな神経回路が形成されます。
たとえば、麻痺した手を動かす練習を何度も続けることで、脳内のネットワークが強化され徐々に機能が回復していきます。 -
個別に合わせたプログラム
人によって症状はさまざまです。
そのため、一人ひとりに合ったリハビリプログラムにて適切な運動療法を行うことで、より効果的に脳の可塑性を引き出せます。 -
心理的サポート
身体の回復だけでなく心のケアもとても大切です。
リハビリに対する意欲が高まると回復のスピードも上がることが分かっています。
ポジティブな気持ちを持つことが、脳の回復を後押しします。

脳の可塑性を支える仕組み
神経可塑性とは?
脳の可塑性とは、神経細胞(ニューロン)のつながりが変化し適応していく能力です。
学習や経験を重ねることで、シナプス(神経細胞同士の接続部)が強化され新しい神経回路が形成されます。
シナプス可塑性
よく使う神経回路はどんどん強化され、あまり使わない回路は衰えていきます。
この仕組みが学習や記憶の形成に深く関わっています。
リハビリにおける可塑性の活用
- 反復すること:同じ動作を繰り返すことで、神経回路が強化されます。
- 継続すること:リハビリを続けることで、安定した神経回路が作られます。
- 挑戦すること:新しい動作にチャレンジすることで、脳がさらに活性化されます。
最新の研究と技術
脳の可塑性を活かした研究は日々進歩しています。
最新の技術を使うことで、リハビリの可能性がさらに広がっています。
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運動療法
反復的な運動が神経回路の再構築を促し、機能回復を助けます。 -
ロボット支援リハビリ
ロボット技術や仮想現実(VR)を活用し、患者のペースに合わせた運動トレーニングを行うことで、より効果的なリハビリが期待できます。 -
電気刺激療法
特定の脳領域に電気刺激を与えることで、神経回路の再編成を促す方法が研究されています。 -
音楽療法
音楽を用いたトレーニングにより、言語機能や運動機能の回復を助ける効果が期待されています。 -
個別化医療の進展
遺伝情報や身体的特徴に基づいた個別対応のリハビリが進み、より効果的な治療が可能になっています。

まとめ
脳の可塑性は、脳卒中後のリハビリにおいて大きな役割を果たします。
適切なリハビリを行うことで、脳は新しい神経回路を作り、失われた機能を補うことができます。
ロボット技術や電気刺激療法といった最新の研究が進むことで、今後のリハビリの可能性はますます広がるでしょう。
あなたの脳には、回復する力が備わっています。
適切なトレーニングを続けることで、その力を最大限に引き出していきましょう。

執筆者:池田
理学療法士
理学療法士の池田です。
2018年に理学療法士免許を取得し大学を卒業後、回復期病院のリハビリテーション病棟にて勤務。2021年に急性期病院の脳外科病棟にて勤務。2022年に訪問リハビリにて勤務。2025年より脳神経リハビリHL堺にて勤務となります。
回復期病院では、疾患の知識や治療技術の勉強に励み、外部研修に積極的に参加。
急性期病院では、脳外科病棟にて勤務。脳血管疾患のリハビリに従事し、発症間もなくの患者様の回復状況を予測する為の研究に参加。
訪問リハビリでは、日常生活状況に合わせたリハビリや住宅環境の相談など介入。
リハビリでは、本人様にとって安心して出来る日常生活動作を増やして行くと共に、特に歩ける生活を大事にしたいと考えます。よりよい生活が送れるように全力で援助をさせて頂きます。